体系だった教育するよりも機会を与えたほうが社員は育つ
岡村氏 自身、自分の考えはしばしば外れていて、それを補完してくれる役員がいたからこそ今があり、「社長が言っているんだから、そうしましょう!」という体質があったら今はないと思っている。
会議で上司を批判した社員が昇格すれば、「ああいう人でも昇格できるんだな」と受け止め、堂々と意見を口にする社員がつづく。要は主体性を求めているのだが、これは人材育成にも通じている。同社は体系だった教育プログラムを設けていない。
岡村氏は「人を成長させるには、機会を与えることが一番という考え方で経営してきた。教育よりも、考える機会、実行する機会を与えたほうが育つというのが当社の考え方である」と述べる。
しかし、同社が社員に対して冷淡かといえば、けっしてそうではない。むしろ真逆である。それを象徴するのが「愛社員課」という部署の開設である。きっかけは2001年に設立して社員数が200人前後に増えた頃に、岡村氏が「皆の愛社精神が薄れてきた」と感じたことだった。
自分の考えが合っていて50%
人の意見を謙虚に聞いて正しい判断
経営幹部会議で愛社精神に触れると、岡村氏が「尊敬している」と評価するHRM担当執行役員の松嶋良治氏が「まず会社が社員を愛するべきではないのか。それなくして社員に愛社精神を求めるのは傲慢ではないのか」と指摘し、出席者たちが賛同した。その結果、①健康を守る②家族を大事にする③仲間意識を強く持つ――を趣旨に愛社員課を開設したのである。
愛社員課では、岡村氏が月に数回社内で夕食を作って振る舞う「岡村屋」の開催や、週1回全社員への野菜配布を通じて健康管理をサポート。さらに「パパママコンシュルジュ」と呼ばれる担当社員が、勤務に関わる相談窓口になって様々な制度を案内している。岡村氏によると「後になって気づく父親の愛情でなく、その時々にはっきりとわかる母親の愛情を示している」。だから愛社員課なのである。
岡村氏が大切しているのは謙虚であること。これも松嶋氏からの教えだという。設立当初こそ自分の判断は100%正しいと思っていたが、「ビジョナリーパンパニー」などを読み込んで謙虚について学ぶうち、「自分の考えが合っているのは良くて50%、あとの50%は他人の意見を謙虚に聞いて、正しい判断をしなければならないと思うようになった」。
謙虚であれば正のスパイラルが形成されやすい。アドウェイズの足跡は、その原理を証明している。
前編はこちら
決め手は「早さ」と「違い」! リスクを覚悟する勇気も定着 | 『熱中の肖像』vol.31 株式会社アドウェイズ 岡村 陽久社長 前編