「全員社長合宿」で出た案で、採用コストを半年で25%削減
組織文化づくりとは経営理念の浸透でもあるが、「つくる人を増やす」手段として注力しているのが、年2回、経営理念を見直す目的で実施する「全員社長合宿」である。
2回とも朝から晩までひとつのお題について、チームごとにブレストを実施する。直近のテーマは「新卒社員が5年は会社にいたくなる制度や仕組みは何か」。ブレストは経営理念にどう関わるのだろうか。
「会社でも街の活性化でも、自分がつくる側に回れば仕事が楽しくなる。会社の創業期には全員がつくる側だが、200人以上の規模になるとそうはいかなくなる。そこで全員が社長になったつもりでブレストを行なっている。ブレストを半日やれば社長を疑似体験できるので、思考が経営する側に変化する。これが経営理念にリンクしてくる」(柳澤氏)
採用スピードを上げることをお題にしたときには、全員が人事担当者になったらよいという案が出て、この案を実行したところ、半年で採用コストが25%削減された。だが、業務上の成果に直結するアイデアが出るとは限らない。柳澤氏は原点に立ち返ることにした。
年2回、8時間のブレストで「つくる人の側」に変化
カヤックがブレストで重視するのは、何よりも数を出すことである。たとえば1時間に100本のアイデアを出すという指標を設け、年2回、朝から晩まで8時間実施すると、社員はブレスト体質に転換する。数を出すプロセスでは、不平や不満が介在する余地は発生せず、つくる人の側、面白がれる側に体質が変わってゆく。
実際、柳澤氏が社員たちと食事をしても、愚痴の類いはほとんど聞かれず、「どうすれば会社を良くできるかという話題になる」。年2回、8時間のブレストを実施するだけで、社員がポジティブに変化しているのだ。
「この変化を見て、たとえ有効なアイデアが出なくとも、ブレストは経営理念にかなっていることがわかった。これからも毎年2回行ないつづける」。
柳澤氏はそう明言する。経営理念の実践に忠実であれば、それが体質となって、持続的な成長力を培う。カヤックでは、このサイクルが見事に廻っている。
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