一過性の流行で売れ続ける時代ではない“価値”を伝え、坪月商20万円をキープ
その後、同社はスピード成長を遂げ、2012年に東証マザーズに上場し、翌年には東証一部に市場変更した。店舗数は「宮崎県日南市 塚田農場」「宮崎県日向市 塚田農場」「四十八漁場」など17業態・255店舗(直営203店 ・ライセンス52店 )におよぶ(2016年9月末現在)。
2016年3月期連結売上高は218億3900万円(前期は192億3500万円)と増収だったが、経常利益は8億2500万円で、前期の14億9300万円から大きく下げた。米山氏はこう総括する。
「メディアでの露出などで弊社のビジネスモデルが注目を集めた時期の坪月商は、30万円を超えていました。当時は、「物珍しさ」や「流行っている」という理由で来店するお客様が多かったです。しかし、一過性の流行はいつか廃れます。現在の「塚田農場」では、我々が大切にしている“美味しい理由”について店舗を通してお客様に体験してもらうことで、坪月商20万円をキープしています。来年10周年を迎える「塚田農場」ですが、“美味しい理由”にこだわり10年、20年後もお客様に愛されるブランドにしていきたいと考えています」。
伸びている外食経営者は“人たらし”業界コミュニティでもリーダーに
減益の改善策として、同社は、エリアマネージャーやスーパーバイザーなどを店長に戻して本部経費を2~3億円圧縮する一方で、新業態「やきとりスタンダード」の展開に入った。
客単価を2000~2500円に設定し、塚田農場の利用頻度の低い20代の顧客層を開拓してゆく。年内に試験店舗の「若どり屋」「やきとりスタンド」を含む9店舗を出店し、FL比率の検証など業態の強化を経て、短期目標は首都圏100店舗、長期目標としては全国300店舗の展開をめざす。先行する焼鳥専門店チェーンに対しては、同社の強みである生販直結モデルで培った商品の供給力や、鶏に関する専門知識によって、優位性を発揮する考えだ。
同時に中国の天津市に2号店をオープンし、中国での店舗展開を本格化させる。
来期業績予想は売上高260億円、経常利益4億円とまだ改善がつづく見通しだ。
こうした足跡を貫いているのが、同社のミッション「食のあるべき姿を追求する」である。このメッセージが生産者と消費者に届いたことが生販直結モデルを確立させたのだろうが、メッセージ力は台頭する経営者の必須要件だ。
これは資質にも起因する。米山氏はこんな見方をしている。
「伸びている外食経営者は人たらしです。人たらしは従業員やお客様に対してコミュニケーション力を発揮しますし、外食経営者のコミュニティでも自然にリーダーシップを取るようになっています。一方で、まじめに一生懸命に経営していても、どこか人間的な魅力に乏しい経営者は伸び悩んでいるように思います」。
人を惹きつけて離さない磁力は、説得力の素である。これは台頭する経営者に不可欠な資質である。